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北方領土問題はアメリカがまいた火種だった
第2次世界大戦末期、アメリカは少しでも犠牲を減らして日本を降伏させるため、1945年2月のヤルタ協定で、千島列島をソ連に引き渡すことを条件に戦争に参加してもらった。
その結果、ソ連は北方領土まで占領してしまい、それがロシアになった今も続いている。
ソ連(ロシア)と友好関係を作らせたくないアメリカ
1956年のソ連との交渉で、国後島・択捉島を放棄し、歯舞群島・色丹島の2島で解決しようとしたが、アメリカが「もし国後・択捉を放棄すれば、沖縄はアメリカの領土にする」と恫喝し、島を放棄することができず、交渉は決裂してしまった。アメリカは日本とソ連が近づくことを警戒していたのである。
北方領土を返還できないロシアの事情
ロシアにとって、オホーツク海は戦略上重要な海域だ。
ロシアが核攻撃を受けても核で反撃できるように、核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を常に潜航させているためだ。
そのオホーツク海を取り囲んでいるのが国後島・択捉島であり、この両島を返還してしまうとオホーツク海を守れなくなり、ロシアの安全保障政策が揺らぐことになってしまう。
しかもロシアは、憲法をわざわざ「自国の領土を他国に割譲してはならない」という内容に改正し、譲歩しない姿勢を示している。
そもそも、ウクライナのクリミア半島を軍事力で占領し、領土を広げているような国だ。返すはずがないだろう。
ロシアの交渉の思惑とは
なぜロシアは返すつもりがないにもかかわらず、平和条約締結の交渉をするのだろうか。
様々な理由があるが、大きな目的は極東開発のための経済協力、つまり「カネ」だ。ロシアの経済は非常に厳しく、GDPも日本の3分の1程度しかない。
これまでに日本が民間も含めてロシアに投じた額は数千億円にも上る。北方領土問題の解決をだしにして経済協力を引き出そうという魂胆だろう。
ロシアに詳しい政治学者の中村逸郎氏は「ロシアは日本のことをいくらでもお金が出てくるATMだと思っている。暗証番号は『ホッポウリョウド』」と言っていたが、正に的を得た表現だ。
どうすれば北方領土は返還されるのか
衆議院議員の丸山穂高氏が、元島民の方に対し「戦争をしないと取り返せない」と発言して批判されたが、残念ながら彼の言うように、戦争でしか取り返す手段がないのが現状だ。
北方領土問題を解決する方法とは
国後島・択捉島はロシアにとって返還できない重要な島だということはおわかりいただけただろう。
一方で、歯舞群島・色丹島はロシアにとって重要度は比較的低く、実際あまり開発されていない。返還の余地を残しているという見方もある。
どうしてもこの問題を解決し、ロシアと平和条約を締結したければ、国後島・択捉島はあきらめて、残りの歯舞群島・色丹島で決着をつけるしかない。
それには、ロシアとの関係を改善しなければならない強い必要性と、自国の領土を放棄する強い覚悟が必要だが、両方とも足りてないのが実情だ。
北方領土問題は今本当に解決すべき問題なのか
あえて解決しようとせず、この問題をロシアやアメリカに利用されないようにすることも一つの選択肢だ。あせって解決しようとすればするほどロシアの思惑にはまってしまう。
日本としては、自国の領土を不法占拠されていることを認めるわけにはいかないので、返還されるまで永遠に日本の領土だと主張し続ける。
それを理由に、ロシアが仕掛けてくるあらゆる交渉や取引を拒否する。そうすれば、日露関係は改善できず、日本を利用できないロシアは困ることになる。日本がロシアと取引するメリットなんて天然資源くらいで、他は特になく、逆にロシアを利するだけだ。
逆に、ロシアが求めるように、北方領土問題を棚上げしたまま平和条約を締結するふりをして、アメリカに揺さぶりをかける外交カードに使うという手もある。
逆にこちらが北方領土を占領されていることを利用してしまおうというわけだ。
北方領土問題解決のために何をすべきなのか
期待は薄いが、遠い将来、国際情勢の変化や日露両国の国内情勢の変化によって、返還される日が来るかもしれない。
その日のために、今から日本の国際社会におけるプレゼンスや外交力を高める努力をしていく必要があるだろう。